当会会員の木越隆三氏が『隠れた名君 前田利常―加賀百万石の運営手腕―』(吉川弘文館)を、2021年10月に上梓されています。
本書では、幕藩制において最大規模である大名領国の「国主」となった前田利常に注目し、いかなる手立てによって「藩政」という近世的支配を樹立させたのかについて、戦国末期からの本願寺門徒や真宗寺院の動向を注視しながら論じており、その史料に基づいた精緻な分析によって、加賀一向一揆と初期藩政改革が密接に関連していたことを指摘しています。
そして、巻末に述べられている著者の研究スタンスは、加賀藩そして前田家を研究対象としている研究者が共有すべきものではないでしょうか。
「戦後の加賀藩研究は『加賀藩史料』という優れた編年史料に依存し、これに安住してきたように思う。さすがに改作法研究は『加賀藩史料』に頼るわけにいかず、膨大な在地史料の発掘によって発展したが、『加賀藩史料』に縛られた歴史叙述から一歩距離を置くこと、これも本書のバックボーンの一つである。『加賀藩史料』を乗り越え、近世史料学の深化を図る必要を痛感するなかでの執筆であった」
(あとがき、252頁)
ここからも、加賀藩研究者にとって必読の一書といえるでしょう。(宮下 和幸)
[目次]
一揆の国の藩政改革―プロローグ
藩公儀の立上げ
将軍の聟、藩主となる
隠居利長と藩公儀の継承)
家中統合と藩政確立
利常親政始まる
家中統合と知行制改革
一揆の国での国づくり
分裂する本願寺と広がる寺檀関係
伝統寺社再興と寺請寺檀制の導入
利常の隠居と四代光高の治績
将軍家との蜜月と隠居
辣腕の隠居と光高の治績
改作法の断行
「御開作」仰せ付け
「百姓成り立ち」と勤勉の要求
改作法のもたらしたもの)
一揆の国の近世化―エピローグ
